2016年01月08日

望月将悟さん講演会「自然への挑戦で感じたこと」

望月将悟さん講演会
 
静岡商工会議所報Sing2016年1月号掲載
望月将悟さん講演会「自然への挑戦で感じたこと」

 
静岡商工会議所は2015年11月26日、静岡商工会議所・静岡事務所会館5階で、「トランスジャパンアルプスレース」で3連勝の望月将悟さんの講演会を開催しました。その内容の一部を紹介します。(文責:静岡商工会議所 企画広報室)
 
★山に挑戦するのは限界を知りたいから
 
静岡市消防局千代田消防署賤機出張所に勤めています。そこに静岡市の山岳救助を担う部隊が配置されています。
 
静岡市葵区井川の出身で、山ばかりのところで育ちました。井川本村から10km離れた小河内に家があって、中学校3年生の時は、バスに荷物を投げこんで、走って帰りました。山に登ったり、石がごろごろの河原を走って競争したり、魚を獲ったりが、子供の頃の遊びでした。山の斜面にある茶畑で摘んだ茶葉を山から下ろしたり、収穫した椎茸を担いで下ろしたり、親の手伝いを自然にやっていました。それがいまの土台になっていると感じています。
 
消防に入った時に、山を知らなくて事故の現場に行けなかったことがありました。その悔しさをバネに、南アルプスの沢や山に一番詳しくなってやろうと思い、20代から30代は、南アルプスの山々をかけめぐってきました。
 
山に挑戦する理由は、自分の限界を知りたいからです。山の景色や、山で出会った人との会話も、リフレッシュできますが、自分を知ることが一番の強さだと感じて、山へのチャレンジを続けています。最近、山を走るスポーツに人気が出てきました。ひとつひとつ苦難を乗り越えて、自分の自信につなげていくことが、山を走るスポーツにはあると感じています。
 
★北アルプス~南アルプスを6日で走る
 
「トランスジャパンアルプスレース」のコースは、富山湾に面した魚津市をスタートし、静岡市の大浜海岸まで。安全は確保されていなくて、すべては自己責任。フルマラソンと100kmマラソンの記録をクリアし、書類選考、山を使った予選会を通って、ようやく出場できる大会です。2年に1回、開催されています。
 
コースには、北アルプス~中央アルプス~南アルプスと、日本の屋根と言われる3千m級の山々が連なっていて、このような場所は他にはないので、登山者には憧れのコースです。普通に歩くと21日かかると言われていますが、このレースでは制限時間8日間です。
 
前回は2014年8月に開催され、男性27名、女性3名が参加しました。完走者は男性15名、女性1名。リュックの中には、ヘッドライト、合羽、寝袋、ポール、テント。僕はテントを使わずに、木の下や石の隅など雨をしのげるところに寝ます。
 
★追われるプレッシャーで睡眠は2時間
 
415kmをいかに脚の筋肉を破壊しないようにもたせるかが大事です。体力は初日の24時間でほぼ終わります。そこからは精神力、気力が大切になってきます。
 
山で一番いいのは、景色が良くなってきた時です。朝日とか夕日とか普段見られない山からの景色を見られた時は、至福のひとときです。雲海の上を走り、夜間はヘッドライトを点けて走ります。
 
ランナーの1日の睡眠時間は4時間くらいですが、私は2時間位しか寝られません。先頭を行くと、追われるプレッシャーが強いのです。走り続けていると、身体に不調を感じるのですが、1回に10分、20分しか寝られなくて、すぐ進んでしまいます。10分、目をつぶって横になるだけです。その中で、8秒間、寝ながら歩くという技を習得しました。それをずっと続けて進んでいくわけです。
 
靴は、いつも濡れた状態になり、足の裏がふやけて、豆ができてしまいます。足の裏のケア、身体のケアをしていきます。足は常に乾かします。天気が良いと昼間は30℃を超え、下からも蒸されるので、足の裏が大変です。
 
南アルプスに入ると、富士山が近くに見えて最高です。風が落ち着きます。300kmくらい進んでいるので、相当疲れていて、僕は幻聴で、どこかでおばさんが話をしている声がずっと聞こえたりしました。
 
★みんなの応援を力に完走を果たす
 
優勝、新記録にこだわってレースを進め、三伏峠に来た時に、糸がぷつっと切れてしまいました。待っていた仲間に「もう止めたい」と言ったら、「優勝、新記録は気にしないよ。将悟さんが無事帰ってきてくれればいいんだ」と言われ、ホッとして気持ちを切り替えたら、どんどん元気が出てきました。
 
南アルプスでは、山小屋の人たちがたくさん応援してくれるので、全部に寄って、力をもらいました。井川、玉川では、夜中に横断幕を用意してくれ、安倍街道では、みんなが応援にかけつけてくれました。
 
ゴールの大浜海岸では、たくさんの人たちが待っていてくれました。「やったぞ」という気持ちにはならず、「ありがとう」という気持ちだけでした。たくさんの応援の人たちがかけつけてくれたことが、痛い脚を動かせた原動力でした。
 
ゴールしても、さらに挑戦は続く、と感じました。立ち止まってはいけない、とも思いました。ゴールはない。先はある、と感じた大会でした。
 
http://bit.ly/1ZPqmml
 
トランスジャパンアルプスレース2016
http://www.tjar.jp/



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Posted by 静岡商工会議所広報室 at 18:44│Comments(0)広報誌
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